お題、クッキー

沙紀が保育園へ顔を出すと待ちかねてた様に息子の陽太が立ち上がる。
「あ、お母さんだ!」
「お待たせ〜。さ、帰ろっか」
「うん」


「南先生、ありがとうございました」
「いえいえ、あ、陽太くん、コレ持ってかなきゃ」と言って小さな袋を取り出す南先生。
「コレは?」と私が聞く。
「今日みんなでクッキー作ったんですよ。それでお家の方におみやげで持って帰ってもらってるんです」


「多めに?」
「はい、多めに…」
「あ、先生」
「はい?」
「貰いものなんですけど良かったらコレ、どうぞ」
と言って持ってきた2つあったロールケーキの包みを1つ渡す。


「何ですかこれ?」
「ロールケーキなんですけど、良かったら」
「あっ、でもごめんさい今仕事中なんで…」
「言わなきゃバレないですって。後で食べて下さい」
「…良いんですか?じゃあ、遠慮なく…」


「はい。じゃあ先生、また明日」
「はい、陽太くんバイバイ」
「バイバイ」
そして保育園を出る沙紀と陽太。


「お母さん」
「何?」
「クッキー、おじさんにも食べさせたい」
「おじさんって花屋の優おじさん?」
うなずく陽太。


「よし、じゃあ優おじさんの所寄ってから帰ろうか?」
「うん」
そして夕方の町並みを今来た道を戻る様に歩く沙紀と陽太だった。